こんにちは、公認会計士・税理士のKAZUKIです!
先日、監査クライアントから私道の寄附について相談を受けました




目次
税務上の処理
保有する土地のうち私道部分についてのみを寄付するとき、税務上の処理は明らかです。
基本通達7-3-11の5において、下記のように定められています。
(私道を地方公共団体に寄附した場合)
法人が専らその有する土地の利用のために設置されている私道を地方公共団体に寄附した場合には、当該私道の帳簿価額を当該土地の帳簿価額に振り替えるものとし、その寄附をしたことによる損失はないものとする。(昭55年直法2-8「二十一」により追加)
上記より、寄付した部分の土地面積の価値は、残った土地の価値に振り替えられることになります。
帳簿価格が私道100円、私道に接する保有している土地1000円だとしたとき、
私道を寄附することで私道0円、私道に接する保有している土地1,100円になります。
仕訳にすると両方土地なので、仕訳なしですね。(借方)土地 100円 /(貸方) 土地 100円
そのため、税務上の処理は必要ないため仕訳が発生しません。
では、税務上は仕訳が発生しないことをもって、会計上も仕訳なしでも良いのでしょうか?
会計上の処理
会計と税務では考え方が異なるため、理論上は税務上にあわせて仕訳無しとはなりません。
会計上、実務指針等で私道の寄附について明示されている文章はありません。
しかし、日本の会計基準では取得原価主義を採用しているため、現在BSに計上されている土地(私道)の一部について寄付したにもかかわらず、何も仕訳が発生しないという考え方は受け入れられにくいと考えられます。
今回の私道については、そもそも自分たちで使って収益を生み出すことができる資産ではない(=無価値)と判断して、0円の価値のものを寄付したので会計上も仕訳が起こらないという考え方があるかと思いますが、日本の会計基準ではこのような時価主義的な考えはできない採用しづらいと考えます。
会計上は取得した時の土地全体の簿価を、合理的な方法で私道部分に按分して費用計上することが求められるため、合理的な方法で按分することが最も難しい論点になるかと思います。(単純に面積に応じて帳簿価格を案分することは、私道と保有する土地の価値が等しい計算になるため合理的ではないと考えられるため、私道部分に按分する帳簿価格の最大値が面積割した数値になると考えます)
ただし、重要性の観点から、会計上も仕訳なしとして取り扱うことが認められるケースも多々あるかと思います。
そもそもが私道部分であるため、保有している土地の一部の帳簿価格は財務諸表全体に占める重要性が低いことが多いです。
私の監査クライアントでも、私道の寄付について仮に面積割で帳簿価格を案分計算してみたところ、財務諸表全体に占める重要性が乏しいと判断したため、仕訳なしという処理で問題ないと監査上の判断が行われました(監査法人はBIG4です)。
まとめ
会計上は、保有する土地の一部(私道部分)を寄付する場合には、私道部分に係る簿価を合理的な方法で算定し、費用計上することが求められると考えます。(取得原価主義)
一方、今回相談を受けたクライアントでは、クライアントの規模に対して、面積割で寄付した金額を算定したとしても、費用化する金額が重要ではないと監査上は判断できました。
1㎡当たりの価値は、(寄付を行う私道<残る私道ではない土地)と考えられます。
しかし、面積割の場合、1㎡の土地の価値が等しく計算されてしまいます。(実際には私道よりも、建物などを自由に建てられる土地のほうが価値が高いはず)
したがって、面積割で算出される寄付金額は最大値(上限値)であると考え、面積割で寄付した金額を算定しても監査上は重要ではないという判断になりました
そのため、会計上の処理を税務上の処理にあわせても、監査上は許容することができました。
ではでは!